アクセント
現在建築中の住宅は白をメインとした外壁ですが、建物の玄関周りを暖かい雰囲気にしたい、アクセントをつけるために杉の板張りにしています。
いつもは、本実加工の板張りで仕上げることが多いですが、今回はいつもに比べメインの壁が無表情で白いので、アクセントの板を重ねて張っていく「鎧張り」としました。
段が生じてる分、本実より表情が豊かな雰囲気です。トリプルガラスのサッシが骨太なので、それとマッチしていて、実は相性が良いのかもしれません。
樹脂ペアに比べるとやはりだいぶ分厚い、、、それと引きかえに外皮性能と安心感をかなり与えてくれます。
毎日出入りする空間なのでできるだけ自然素材で優しい雰囲気に仕上げていきたい。どの建物でもその辺りは変わらず意識しているような気がします。
高断熱の玄関ドアも木製なのですが、養生のためお披露目はもう少し先のようです
商業施設にもこういった木を使った空間があると、ホッとします。
なぜエアコンか、、、1
省エネ住宅を考える際に、基本的なスタンスとしてエアコンが一台で空調できる住宅を設計します。
夏用、冬用と分けて二台設置することがありますが稼働させるのは一台。
どうしてエアコンなのか?
ファンヒーターやストーブのほうがあったかくていいじゃないか。なんならコタツが好きなんだけど。エアコンは電気代がかかるし、夏は寒いし、全然効かないし、、、そんな声をたくさん聞きます。
まず、エアコンは省エネです。
エアコンには「ヒートポンプ」が備えられていて、少ない投入エネルギーで、空気中などから熱をかき集め、大きな熱エネルギーとして利用することができます。これは冷蔵庫や洗濯機にもついています。
このヒートポンプが優れもので、少ない電気エネルギーで部屋を暖めたり冷やしたりすることができるのです。
ざくっと簡単にすると、電線から1のエネルギーをもらい、3にして室内を暖めるイメージです。(ざくっとしすぎたかもしれません)
他の暖房機はヒートポンプがついていないので1のエネルギーをもらい、1で暖めるといった感じです。
ドライヤーをずっと使うと電気代が高くなるイメージがあると思いますが、ヒートポンプのついていない電気ヒーター系はドライヤーを使ってるイメージです。こたつも同様。
効率よく電気のエネルギーを熱エネルギーに変換できるエアコンは優れものなのです!家電屋さんにいってもTV、掃除機等はデザインの秀逸な海外メーカーがありますが、エアコンは国産メーカーだらけ。日本が誇る素晴らしい技術の一つですね。
なるほど、省エネだからエアコンは効かないんだ!!!という意見が出てきそうですが、残念ながらそれは違います。エアコンは悪者ではないのです。悪いのは性能の低い家、、、
実は、エアコンに活躍してもらうためには建物の性能が大きく関わってきます。
それは、また次回に。
暖房室と非暖房室
10月も中旬となり、だんだんと冷えてきました。晴れた日中は暖房せずとも暖かいけれど夜や朝方は暖房が必要な気温になってきて、暖房をつけるか、着込むか、あるいは寒さを我慢するか。
一般的な住宅では風呂上がり(もしくは入る前)やトイレの際に寒さを感じはじめる時期でもありますね。
風呂やトイレは空調のない「非暖房室」なので空調のある「暖房室」にくらべ室温が低いです。10月だとまだ感じにくいかもしれませんが、外気温のがもっと下がれば暖房室と非暖房室の温度差はより大きくなり寒さを感じます。温度差が大きくなると「ヒートショック」を起こしやすくなります。温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動し、失神したり心筋梗塞や脳卒中を起こすことをヒートショックといいます。実はこれ結構な問題でして、ヒートショックで亡くなる人の推計は、年間1万9千人と言われています。交通事故者は年間3千人程度で年々減少しています。車関係は色々と対策が打たれ成果が出ていますが、住宅の浴室まわりはなにもされてないのが現状です。ユニットバス の高性能化は進んでいるのかもしれませんが、風呂場の中だけでなく、その前の脱衣室、廊下に温度差があってはダメですね。
日本は断熱に関して世界でかなり遅れをとっていますが、ヒートショック死者数も海外と比べ4倍以上多いそうです、、、
そういった空間を非暖房室から暖房室へ変えていくことが大切です。高性能住宅であればもちろんそういった問題はなくなりますし、一般住宅でもエアコンが脱衣室まで届くような改修提案をしてあげるのが良いと思います。
新築で脱衣室に電気ヒーターをつけるところがありますが電気の無駄遣い、省エネの真逆、、、(ユニットバスの浴室暖房もエネルギーめちゃくちゃ喰うので要注意)
建物の高性能化でヒートショックは防げます。省エネ基準もまともに整備できないところを見ると国に期待はできないので、設計者が意識を持って頑張るしかありません!
より少ないエネルギーで快適に過ごせる住宅を設計するのはこれからもっと必要になってくるはずです。
いいものを使ったからといって
ウレタンっていう泡のやつ使ってあるからいいんでしょ?高断熱で。
という話を聞くことがよくあります。
実は、吹き付けウレタンの熱伝導率は高性能グラスウール 16Kの0.038[w/(m・k)]とかわらない。物質の熱の伝えやすさが熱伝導率なのでこの数値が小さければ断熱材としては高性能ということ。
弊社では耐力合板とネオマフォームが一体となったpjパネルを使いますが、ネオマフォームは熱伝導率0.02[w/(m・k)]。
どれが高性能なの?
物質の性能だけでいうとネオマフォームなどの「フェノールフォーム断熱材」といわれるものが一番で約0.02[w/(m・k)]
続いてスタイロフォーム、ミラフォームなどの「押出法ポリスチレンフォーム断熱材」が0.028〜0.036[w/(m・k)]。
高性能グラスウールやロックウールは0.036[w/(m・k)]、昔の住宅に使われていたグラスウール 10Kというやつは0.05[w/(m・k)]という性能になります。
ではどれを使えば高断熱なのか?
正解は、、、全部高断熱になり得ます。
熱を伝えないには断熱材をどのくらいの厚さで使うかが重要。
断熱材の性能に厚さを加味した数値で、「熱抵抗値(R)」があります。(「熱抵抗値」とは、物質の中の熱の流れにくさを数値化したもので、数値が大きいほど断熱性がよい)
pjパネルはネオマフォーム80mmなので
R=4.0(m2・K/W)
高性能グラスウール16Kを105mmで
R=2.76(m2・K/W)
吹き付けウレタンを80mmで
R=2.10(m2・K/W)
吹き付けウレタンだけでは、数値が小さいのがわかると思います。
ちなみに、グラスウール10Kを105mmで
R=2.1(m2・K/W)
吹きつけもグラスウール10Kが同じ数値になります。(吹き付けは壁の中目一杯までふくことができないため105mmの厚さがとれません。)
ちなみに、性能の低いグラスウール10Kを200mm施工することができればR=4.0で、最高性能のネオマフォーム80mmと同じ断熱性能をもたせることができます。
熱抵抗値は、(断熱材の厚さ)÷(断熱材の熱伝導率)で求めることができるので簡単です。
ネオマの場合
0.08(m)÷0.02(w/(m・k))=4.0(m2・K/W)
建物の断熱性能に、断熱材の厚さが大きく影響することがわかったかと思います!
ではなぜ、吹き付けウレタンがよいもの、高断熱、と思われているのでしょうか?
メーカーがそのように宣伝しているというのもあるかとは思いますが、一般住宅でほとんど行われていない建物の「気密化」が吹付を用いることで行われるからです。建物の隙間を塞いで隙間風が入らない建物ではエアコンの効きも断然違います。
吹付の住宅は性能は高くないけど、隙間も埋めれるから今までの住宅よりは体感的に暖かい。が正解なのかもしれません。
(気密施工を吹き付けだけに頼ってるので、時間経過とともにそれがポロッと剥がれれば昔の住宅と同程度に落ちてしまうのですが。)
改修の床下には気密化が一気にできる吹き付けはおススメです。その他に透湿抵抗などの性能値も関わってくるので適材適所、様々な断熱材をどのように使うかが大切ですね。
視線が抜ける感覚
建物を計画する際に、視線が抜ける感覚を意識します。ドア開けて前に壁しかなかったら嫌だなぁとか、どん詰まりより開口部があってその先に目線が抜けるといいなぁ。と。
配置の段階で窓位置や抜ける先の検討をつけておく。
建具の上に垂れ壁があるのも極力避けたい、
天井がつながっていくのが気持ちいい。
あまり関係ないことなのかもしれないが、学生時代、建築家の長谷川豪さんが、五反田の住宅の説明において、互いの建物を中央の階段で移動する時の「身体が拡外へ拡張する感覚」を大事にしたい。(のようなことだった気がする、、、)と言われていたのを思い出す。
久しぶりに作品集を眺めてみる。
建物が明快(その作品でやりたいことがはっきりしているという意味において)でカッコいい。
平家の住宅もかなり仕上げが進んできた。
完成が楽しみです。
オープンハウスのご案内
この度、弊社にて設計・監理を行っておりました平屋の住宅ですが、
お施主様のご厚意により、オープンハウスを開催させていただけることとなりました。
設計・監理:渡邊建築工房 株式会社
施工 :有限会社 森下コンストラクター
平屋で29坪の小さな住宅ではありますが、
造作建具、ロフトと連続するリビングなどの平面断面計画の工夫により窮屈さを感じにくい住まいを目指しました。
「高断熱で小さい」という特徴を活かし、小さなエアコン1台で全館空調ができるような設計としています。
付加断熱とトリプル樹脂サッシ、基本的な日射遮蔽を検討したうえで、
予算内で特殊な設備を用いず、建物の性能と工夫で空調が効く家!を目標にした、
省エネ住宅に関する工夫の詰まった平屋建て住居です。
(結果としてUa値0.33,G2.5グレード程度の性能です)
市内において高気密高断熱住宅を見る機会も少ないかと思いますが、メーカーの工法に頼らず、納まり、断熱材の厚さ、サッシの種類、空調計画を丁寧に検討した住宅です。
付加断熱や高気密化に際して数年前から森下コンストラクターさんとも二人三脚で取り組んできました。高性能住宅に興味のある方にはそのあたりのお話が楽しいかもしれません。
性能だけでなく、デザイン・実用性もおろそかにしたくない!規格品ではなくて自分たちの想いを住まいにしてほしい!といった方々に見学いただければ幸いです。
ご都合がつけば、この機会に是非ご覧下さい。
※ご相談いただければ日程の調整も可能ですので、気兼ねなくご連絡ください。